きょう(3/27)午前に栃木県の那須町のスキー場で雪崩による大変な事故が発生しました。

きょうの栃木県那須町は、未明から朝にかけての数時間をピークに30センチ以上の湿った雪が一気に降ってその新雪が滑り落ちる「表層雪崩(新雪雪崩)」という現象が起きたものと考えられます。雪はミルフィーユのように層のようになっていて、かなり前に積もった古い層、少し前に降った雪の層、わりと最近積もった雪の層など性質が違うものが積み重なって積もっています。

☆表層雪崩は、新たに大量の積雪が増加して、上の新しく積もった雪の層が滑り落ちるタイプの雪崩

※表層雪崩の参考動画を紹介します。

 

【なだれの破壊力は!?】

規模の小さいものでも、道路の斜面などで起きて、車が押し流されたりしまう可能性があります。滑り落ちる雪の量が多くなると、家やコンクリートの建物を吹き飛ばすほどの破壊力があります。

 

【なだれの危険個所】

まず斜面の傾斜でいうと、30度から45度での発生数が多くなります。50度以上の急こう配だと雪が積もりにくいので、ちょうど30度~40度台の傾斜が危険です。そして、木があまり生えていないところも発生しやすく過去に発生したことのある場所で再び起きるというケースも多いのです。

 

【予兆・前兆は】

これからの時期に多い全層なだれの代表的な前兆は、「雪しわ」「クラック(亀裂)」です。雪しわというのは、雪の垂れ下がる性質によって雪面がたるんでしわ上になったもので、このような斜面は注意が必要です。また、斜面の亀裂が時間とともに大きくなるのを見つけた時は危険度が高いことが多いです。

 

【この先も危険!?】

これからの時期は、新たに30センチ以上の大雪になるケースはほとんどなくなっていきますが、先に30センチ以上の雪が1日で降るような可能性がある時は、この表層雪崩のリスクが高くなりますので、登山は状況や最新の気象情報を確認の上、中止した方が良いかもしれません。登山の責任者は、そういった安全サイドの判断も必要です。
イベントや行事の開催の判断については、登山に限らず、大半の人が「自分たちは大丈夫」と安易に判断しすぎる傾向があります。これは「正常化のバイアス」とも呼ばれ、「人間の性(さが)」の一つです。

 
これからの春の雪どけ時期は、きょう発生した「表層雪崩」よりも、雪の層全体が滑り落ちる「全層雪崩」の方が発生しやすくなります。全層なだれを対象にした雪崩注意報は、北海道内の基準だと積雪が50センチ以上残っていて、かつ一日の平均気温が5度以上の時に発表されます。さらに雨が降るようなときは、より一層危険度が増します。

来週の道内は、今週よりも気温のベースがもう一段階上がり、日平均気温が5度以上になる地域も出てきそうです。山間部や傾斜地では、なだれの発生にこの先も注意が必要です。

 

お天気+プラスでは、身近な天気や気象災害についても解説していきます。コラムなど執筆や講演のご依頼はお気軽にどうぞ!