春~初夏にかけて気温が急激に上がった時によく耳にする『フェーン現象』とは?自分の街はどんな時にフェーン現象が起きて気温が上がるのかを「おしえてプラス」のコーナーでわかりやすく解説します!

 

フェーン現象って何?

フェーン現象」とは、空気が山を登って、降りる時に暖められた空気に変わる地形の効果のことです。山越えをすることによって熱せられた風ともいえます。以下の簡略図のイメージのようになります。

 

山越えの熱い風「フェーン現象」とは

 

標高1500mの山でのフェーン現象を図にしたものです。はじめ15℃の水蒸気を含んだ空気(湿った空気)が山を登るときは湿った空気が山の斜面で上昇し、雲ができて雨を降らせます。この空気が上昇する過程では標高が100m上昇する毎に約0.65℃気温が低下するため、頂上での温度は約5℃になります。その後、水分がほとんどなくなった乾いた空気が吹き降りる時は100m下降する毎に約1℃上昇するという性質があるため、1500m吹き降りた後の風下側の気温は20℃になります。つまり、山を登る前は15℃だった空気が、山をのぼって降りた時には20℃まで暖められ、フェーン現象によって5℃昇温したということになります。

 

 

フェーンはどこで起きる?

フェーン現象は、北海道内では、主に以下のような場所で度々起きています。

▲日高山脈の風下側の十勝地方
▲大雪山系・北見山地・石狩山地の風下側のオホーツク海側
▲夕張山地・天塩山地の風下側の上川地方
暑寒別岳など増毛山地の風下側の留萌南部
手稲山・無意根山・恵庭岳などの風下側の石狩地方

 

札幌周辺の高い山々

札幌の西から南西には手稲山をはじめ標高が1000m以上の山々があるため、この山を越えて吹き降りる西風や南西風が吹くと、フェーン現象により気温が上がるのです。

 

 

フェーンの決め手は『風』

フェーン現象によって気温が上昇する度合は、『風』で決まります。

「風向き」が山を越えて吹き降りるように流れる時に特に昇温が大きくなりますので、北海道では南西や西の風の時にフェーン現象の効果が強まることが多いです。また、南西風や西の風は、元々暖かい海や陸地を通ってくる気流のため、春先は暖かく、夏は暑さを強めます

反対に東~北東の風でも、小規模なフェーン現象は発生しているのですが、北海道で吹く東~北東の風は冷たいオホーツク海などを通る元々の空気の質自体が冷たい風のため、風下側で昇温しても暖かさや暑さを感じることはほとんどないのです。

そして、「風の強さ」もフェーン現象の決め手になります。そよ風程度の弱い風の時には、山を登って吹き降りるほどの力もなく、フェーン現象はほとんど起きませんが、ある程度の風の強さがある時(天気予報で「やや強い」または「強い」などと表現されている時)は、山を登って吹き降りる時にしっかり昇温することになるのです。

 

 

火事を引き起こす原因にも!?

2016年の年末に新潟県糸魚川市で起きた大規模な火災が起きた日は、強い南風が中部山岳を吹きおりて、新潟など日本海側に暖かい乾いた空気をもたらすフェーン現象が発生していました。糸魚川市によると、この火事によって144棟を焼失・焼損させ、焼損面積は4万平方メートル、120世帯224名が被災者となったということです。2016年12月22日の糸魚川市は最高気温が20.5℃(12月の史上3位)最大瞬間風速は24.2m/s(12月の史上4位)という記録的に暖かく、風が強い日でした。

このようにフェーン現象は、風下側で気温が上昇するのに加えて、乾燥した空気をもたらすため火災のリスクが高まります。強風注意報と乾燥注意報が同時に発表されているような時にフェーン現象が起きるような風が吹く時は、一度火がつくと一気に燃え広がる恐れがあります。フェーン現象が発生する日は、火の取り扱いに十分な注意が必要となります。

 

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