本格的に暑くなる7月~8月は、熱中症で救急搬送される人が急激に増加します。

日本国内で年間平均約500名もの方が命を落とす熱中症は、気象災害の一つといっても過言ではありません。

熱中症は気温が高い日に起きやすいのはもちろん、湿度も高くなる真夏は、さらに注意が必要です。高温多湿な状態になると、汗が蒸発しにくく、スムーズに体温を下げることができなくなり、体温が上昇し熱中症発症のリスクが高くなるのです。

熱中症の起こり方 熱中症保健指導マニュアルより引用

 

❚どんな人がなりやすい?

熱中症に特に気を付けたいのは65歳以上の高齢者や乳幼児ですが、こんな方も要注意!

〇体調の悪い方(睡眠不足・二日酔いなど)

〇肥満気味の方

〇暑さに慣れていない方

〇作業や運動の初心者

高齢者は体内の水分量が少なく、喉の渇き・暑さを感じる能力が衰え、知らず知らずに水分不足となり、重症化するケースも多いのです。乳幼児は汗腺が未発達で上手に汗をかいて、体の熱を下げることが出来なかったり、自分自身の意思だけでは水分補給が出来ないことからリスクが高くなっています。

また、作業の初心者は、周囲についていこうと無理をしてしまいがちですし、弱音を吐かない頑張り屋の方も熱中症になりやすい傾向があります。暑い日は少し力を抜くくらいの心構えがちょうど良いのです。肥満の方は、体に熱がこもりやすいので、気を付ける必要がありますし、寝不足など体調不良時は普段なら大丈夫な暑さでもいつも以上に体に負担がかかってしまいます。

 

❚熱中症の症状と応急処置

熱中症の症状とその対応

熱中症の症状の特徴を理解して、その時どのような必要があるかを覚えておきましょう!

軽度:めまいや立ち眩み、筋肉がつるなどの状態は、熱中症の第1段階で現れることが多いです。

この時の対応としては、木陰など涼しい場所にすぐ移動して、水分と塩分を補給しましょう!足がつるなどの症状は、塩分不足のスポーツ選手によく見られる症状です。また、体が暑いと感じた時は、わきの下や足の付け根などを保冷剤などで冷やすようにしましょう。

 

中等度:頭痛や吐き気、体が非常にだるかったり、強い虚脱感などがある場合で、熱中症の症状がしっかりと出ている状態です。

学校などでは速やかに保健室へ周りの付き添いと見守りのもと連れていき、水分塩分の補給や冷却により症状が改善しない場合は、速やかに病院に直行しましょう!

 

重度:意識がない、体に触れると熱いと感じるほどの高すぎる体温、まっすぐに歩けないなどの症状になると、迷わずに救急搬送する必要があります。

すぐに集中治療が必要な危険度になっている場合もありますので、周りにいる方が注意深く様子を確認しましょう!

 

 

 

❚チェックポイント①気象条件

熱中症は暑いだけでなく、湿度が高く蒸し暑い時や、風が弱い日日差しが強い時にも増加する傾向があり、条件が重なる日は要注意です。

また、特に気を付けたいのは『急に暑くなった時』です。暑くなった初日に熱中症の発症が急増するため、無理をしないことが熱中症予防の鉄則です。

 

❚チェックポイント②集団行動

スポーツや作業現場では、集団行動がリスクを高めることを意識する必要があります。

集団行動では、少々体調が悪くても、知らず知らずに無理をして周りについていこうという意識が働きます。

また、寝不足や二日酔いなどの体調不良を隠してしまいがちだったり、暑さ自体に慣れていない人や作業や運動の初心者の方もいます。

集団行動では、一人一人無理をしすぎない意識も必要ですが、部活動のコーチや作業現場の責任者など管理する立場の方が、状況をしっかり把握することが大切です。

 

 

❚暑さのレベルをチェックしよう!

テレビなどで天気や最高気温を確認することはもちろんですが、厳しい暑さが予想される時は、

暑さ指数(WBGT)』を確認すると熱中症予防に有効です。

環境省 熱中症予報情報WEBサイト

暑さ指数は湿度などを重点的に計算値に取り入れて、暑さによる体への負担度を数値化したWBGT値をもとに、生活活動の制限などの目安や注意事項を確認できるものです。

WBGTとは 環境省WEBページより表引用

 

また、作業や運動を本格的にする場合は、その場所での暑さのレベルも簡単な計測器でチェックすることもおススメします。天気予報で発表している気温は、芝生の上で直射日光を避けた場所で測る気温の予測値のため、アスファルトなどの照り返しのある場所や炎天下ではさらに暑くなっている場合も多いためです。写真のような簡易的な熱中症計は2千円前後で購入できます。

簡易的な熱中症計

 

❚水分補給3か条

暑い日の水分補給は次の3つのことに気を付けることが熱中症予防のポイントです。

1⃣喉が渇く前からこまめに

2⃣汗を大量にかいたら塩分も

3⃣カフェイン☕やアルコール🍺の利尿作用に注意

 

強い喉の渇きを感じた時には体内の水分の2%以上が失われているサイン。5%程度失われると、熱中症の症状が現れる可能性が高くなります。特に高齢者は喉の渇き自体を感じにくくなっているため、喉が渇いてなくても、脱水症状になる恐れがあります。

「喉が渇く前からこまめに」を基本に、意識的に定期的に水分をとりましょう!

 

また、汗を大量にかくと、血液中の塩分濃度(ナトリウム濃度)が低下し、いくら水分をとっても、体の中で塩分濃度がそれ以上薄くならないようにする作用が働くため、水分を補給してもそれ以上は体に入っても出てしまうようになります。(水摂取過剰状態)

汗をたくさん書いた時は、ナトリウムが入ったスポーツドリンクなどで水分を補給するようにしましょう!また、日頃の食事の中でもお味噌汁や梅干しなど日本人らしい食事を1日3食しっかり取っていることで自然と適度な塩分補給になります。

 

☕コーヒーを1日に何倍も飲む習慣がある方や毎日晩酌を欠かさない方に気を付けていただきたいのは、カフェインやアルコールの利尿作用です。コーヒーばかりの水分補給やお酒での水分補給は、水分をとった気になっていても、実は飲んだ以上に尿として水分が失われている場合が多いのです。暑い日の水分補給は、必ずカフェインやアルコール以外でもしっかりととるようにしましょう!

 

 

❚おさらい『熱中症予防の基本』

熱中症予防の基本は次の3つで、これらを日頃から意識して行動することで、かなりの確率で暑い日でも健康を保てます。

熱中症予防3つの基本

 

この中でも見逃せないのは、②の無理のない計画です。暑い日はこまめに休憩をとれるようなタイムスケジュールを意識して行動することが大切です。休憩をとる際も、暑い所で休むのではなく、屋外にいても出来るだけ日陰の涼しい環境の中で、水分補給をして、体温が上がるのを抑える時間を設けましょう!

これは、運動や作業などの強い負荷のかかる場合だけでなく、例えば、旅行中などでバタバタと詰め込んだスケジュールで息つく暇なく楽しんでいるうちに具合が悪くなるといった場合もあります。時間と心のゆとりは熱中症予防においても心がけたいですね!