冬に注意!といわれる『ヒートショック』。急激な温度変化によって、血圧が大きく上下動することで発症し、脳出血などで命を落とすこともあります。今月のプラス【12・1月号】では冬に急増するヒートショックとその予防法を特集します。

 

 

「お風呂」が要注意!

暖かい居間などにいる時、血圧は安定し血管は拡張した状態ですが、比較的寒い脱衣所などに移動すると、血管が収縮して細くなり、血圧が急激に高くなります。そして、暖かい浴槽内に入ると、今度は血管が拡がり、血圧はまた一気に下がります。このように血管に短期間に大きな負荷がかかることでヒートショックは発生します。

風呂に入るまでの急激な温度変化

特にお風呂で温まった時に血圧が一気に下がると、脳に血液が届けにくくなり、意識障害や失神を引き起こすこともあります。ヒートショックは、血圧が急激に下がるというのが典型的な症状で四肢に力が入らなくなったり、起き上がろうとしたら、めまいで転倒してしまうというケースも。浴室でおぼれて死亡する人の数は一年に全国で約5000人もいます。これは交通事故による死者数よりも多いのです。また、おぼれだけでなく、入浴にかかわる死亡者数(入浴直後から翌朝にかけて多く発生)は推計年間1万9000人もいるといわれています。特に救急搬送される高齢者は、冬に急増する傾向があります。

おぼれによる全国死者数

 

 

 

冬に多発する「脳出血」

脳卒中の一つである脳出血は脳内の細かい動脈が切れる病気で、寒い冬に多発する傾向があります。中でも12月~1月に発症のピークがあります。

気象条件が大きく影響するのは、「気温の較差が大きい日」「12月~1月の朝の最低気温が低い日」に起こりやすいので、特に注意が必要です。

脳出血をはじめとする循環器系疾患の予防には、血圧を正常の範囲内にコントロールすることが最も大切です。具体的には上の血圧が140㎜Hg以下下の血圧が90㎜Hg以下という数値が正常血圧の範囲で、これ以上だと高血圧と判定されます。血圧が高い状態が続くと、次第に血管が厚く固くなり、本来のしなやかな動きを失っていくことで、自覚がないまま動脈が硬化してしまうのです。これが高血圧が脳卒中や心疾患などの循環器系の病気のリスクが高くなる原因です。正常血圧の人に比べて、高血圧の人の循環器系疾患の危険度は1.5倍から5倍というデータもあります。

血圧測定

 

 

冬の安全な入浴法

①42℃以上の高温での入浴を避ける

高齢者の場合は42℃以上のお湯に入浴すると、血圧の急激な下降が起こり、突然死の原因になりやすいというデータがあるようです。

『39℃±1℃が適温』

:ゆっくり湯につかって、じんわりと汗をかく程度が適温の範囲で、体もリラックスできます。

 

②脱衣所や浴室の温度を上げる

暖かい居間などの部屋と脱衣所や浴室の温度差が大きいと、服を脱いでお湯につかるまでの間に体が冷えて、血圧が急激に上昇しやすくなります。

浴室の温度を上げるために、シャワーなどで高い所から湯をはるなどの工夫も有効です。

シャワー

また、高血圧の方や高齢者は、浴室が温まっていない「一番風呂を避ける」こともヒートショックのリスクを減らすことになります。

 

③早めの時間に入浴する

夕食前の午後2時~午後4時の早めの入浴がおススメです。

人間の生理機能がピークにあって、温度差に適応しやすいためです。

また、もし万が一、救急搬送されるようなことがあっても、病院側での対応もしやすいため、入浴による死亡リスクを低くすることにつながります。

 

④食事直後や飲酒直後の入浴を避ける

食後は胃や腸などの消化器に血液が集中します。食後すぐに入浴すると、消化器に本来集まらなければいけない血液が分散されてしまい、消化不良が起きることがあります。

また、飲酒直後に入浴すると急激な血圧低下や脳貧血不整脈などを起こすリスクが高まります。晩酌をした後は、1~2時間は時間を空けてからの入浴がおススメです。

⑤入浴前後に水分補給をする

入浴前後にコップ1杯程度の水分補給をすることで血圧低下を予防できます。特に入浴後は発汗して失われた水分をしっかりとるようにしましょう!

 

 

 

北海道は室内外の気温差が最大

民間気象会社ウェザーニューズが2010年冬に実施した室内温度の全国調査によると、47都道府県で一番温度が高かったのは北海道でした。

外が寒い北海道は、高気密住宅に住んでいる方が多く、部屋を暖かくして他の都府県よりも室内では薄着で過ごす傾向があるようです。

外気温は一番低い北海道ですから、室内外の気温差も北海道は全国ナンバー1ということになります。

ということで、暖かい室内から寒い外に出る時には、しっかり防寒をして血圧の急激な変化を出来るだけ抑えるということが、北海道におけるヒートショック対策では重要です。

 

除雪やトイレも要注意

血圧の変化は、比較的寒いトイレや、除雪で体を動かしたときにも大きくなります。北海道の場合は、雪かきをする際も体を冷やさないようにして、急激な血圧の変化が起きないように気を付けるということも日々の生活で必要です。

雪かき

 

 

※参考文献:健康気象アドバイザーテキスト、高齢者の安全入浴に関する教本、その症状は天気のせいかもしれません など

 

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