桜が咲くころになると、そろそろ気になるのが「シラカバ花粉」。例年4月の下旬頃から飛び始め、5月をピークに6月の始め頃にかけて飛散します。
今月の天気プラス5月号では、『シラカバ花粉との上手な付き合い方と予防のポイント』について特集します。
北海道の花粉症
全国レベルでは4人に1人以上がスギ花粉症患者と言われていますが、北海道は道南を中心にスギ林が関東の10分の1以下の量しかなく、道内のスギ花粉症患者は全国で最も少ない50人に1人程度しかいません。一方で、スギ以外の花粉症患者は道民の5人に1人ほどの割合でそのうちの大多数を占めるのが、シラカバ花粉症患者です。
その他、チモシーなどのイネ科花粉やブタクサなどの雑草系花粉、秋の始めにはヨモギによって花粉アレルギー症状が出る方もいます。3月のハンノキをスタートにして秋にかけては北海道内では何らかの花粉が飛んでいるということになります。
シラカバ花粉症の症状
花粉の飛ぶ時期にだけ下記のような症状が現れます。
①くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎
②眼のかゆみ・流涙などのアレルギー性結膜炎
③口腔アレルギー症候群(OAS)
シラカバ花粉症の約2人に1人の割合で、この口腔アレルギーが発症しているというデータもあります。花粉症の症状がより悪化した方に口腔アレルギーの症状も出ることが多く、イチゴやリンゴ、サクランボなどのバラ科の果物を食べると口の中や喉がかゆくなったり、痛みや腫れが出たりすることがあります。
シラカバ花粉症を起こす🌲木の種類
北海道でシラカバ花粉症を引き起こす樹木は、シラカンバ、ダケカンバ、ウダイカンバのカンバ類の3種の🌲木がほとんどです。
北海道の天然林はトドマツなどの針葉樹やシラカンバなどの広葉樹がありますが、シラカンバを含むカンバ類は広葉樹のうちおよそ2割を占めていて、道内には森林地帯から街路樹まで様々な場所にシラカバ花粉症を引き起こす木が植生しています。
シラカバ花粉の大きさはわずか0.03㎜(約30㎛)と小さく、風に乗ると数十キロメートルも飛んでいきます。このため、市街地のシラカバ花粉はほとんど収まっても、少し遅れて飛散する山から飛んでくるシラカバ花粉があるために、6月上旬ころまではシラカバ花粉に要注意なのです。
許容量を超えると発症!?
花粉アレルギーは、今まで症状がなかった方でも、許容量を超えて突然発症することがあります。人それぞれに許容量がコップの大きさのように決まっていて、その許容量に相当するコップから今まで吸い込んだ花粉の量があふれた時に症状が発症するというイメージです。
花粉症は遺伝する場合も多いので、特に両親ともにアレルギー症状のあるご家庭のお子さんは、花粉症を発症しやすい傾向があります。このような場合は、小さいうちからアレルギー症状が出ていないか注意深く見て、もし症状がお子様にもありそうな場合は早めに耳鼻科などを受診すると良さそうです。
ちなみにシラカバ花粉に対する抗体を体に持っている人の割合は、道内全体でおよそ3割、札幌市民ではおよそ4割、上川地方では5割以上もいるというデータがあります。
まだシラカバ花粉症の症状が出ていない方でも、将来的にはある日突然、発症する可能性がありますから、やはり花粉を必要以上に体に入れないようにした方が良いと考えられます。
花粉予防のポイント
(1)こんな日は要注意!
1⃣晴れて空気が乾燥した日
2⃣気温が高い日
3⃣風が強い日
4⃣雨上がりの翌日
これらの条件を複数満たす日は、一気に大量飛散する傾向があります。特に空気が乾燥した日は、喉や鼻の粘膜も弱って体の防御能力も落ちている場合もあり、要注意となります。
晴れてポカポカの春の陽気で、お花見日和は花粉症の要注意日ということになります!
また、雨の日は花粉の飛散量は少なくなり、花粉症の方にとってはほっと一息つけますが、雨上がりの翌日は2日分一気に飛散するケースも多く、万全のケアが必要になる日です。花粉症の方にとっては、日々の天気予報や週間予報でこのような条件になる日がないかをチェックすると良さそうです。
(2)一日の中で多い時間帯は?
『昼前後』と『日没頃』に多くなる傾向があります。
気温が上がって午前中に山林から飛び出した花粉が数時間後に都市部に到達するため昼前後に多くなり、上空に巻き上がった花粉が日没頃に地上に落ちてくるためです。
(3)予防の3大原則
1⃣花粉を吸わない
2⃣花粉に触れない
3⃣花粉を持ち込まない
まずは、マスクなどをきちんと使用して花粉を吸わないようにすること、そして、眼や鼻・喉など粘膜が花粉に触れないようにすること、さらに室内に持ち込まないように服に付いた花粉をよく払ってから家に入るということも重要なんです。
予防アイテム別のポイント
(1)マスク
一般的に市販されているマスクを着用することで、花粉を吸いこむ量を約3分の1から6分の1に減らし、鼻水や鼻づまりなどの症状を軽減する効果があります。衛生面から考えると、マスクは使い捨ての不織布マスクがオススメです。性能の良いマスクでは95%以上の花粉をカットできるものもありますが、大切なことは顔にフィットするものを選ぶことです。横や上に隙間ができると花粉はそこから侵入します。
症状が重い方にオススメなのが、『インナーマスク』です。通常の使い捨てマスクの内側にガーゼや化粧用のコットン丸めて当てることで、鼻に入る花粉を大幅にカットでき、実験結果では99%も花粉を除去できる効果があるそうです。
インナーマスクの作り方については、以下のURLからテレビ番組で取り上げられた映像をチェックしてみて下さい。
http://www.ntv.co.jp/oha4/harutoku/93940.html
(2)メガネ
普通のメガネでも眼に入る花粉量を約40%減少させ、防御カバーのついた花粉症用のメガネでは約65%も減少するという実験データがあります。眼の症状が出やすい方は、防御カバーのついたメガネを選ぶと良さそうです。
コンタクトレンズの装用は花粉の飛散時期にはアレルギー性結膜炎の症状を増幅させることがあり、状況によってはメガネに替えた方が良いと考えられています。
(3)衣類
花粉の飛散時期には服の素材にも気を付けると良さそうです。ウール製の衣類は綿に比べて約10倍も花粉が付着しやすいという実験結果もあります。その他には化繊で約2倍、絹が約1.5倍も綿の衣類に比べて付着しやすいというデータがあります。花粉が飛散する時期の外出には、外側にウール素材の衣類の着用は避けた方が良いでしょう!
(4)帽子
頭と顔にも花粉は付着しやすいので、つばの広い帽子を被ることで頭や顔に花粉が付く量を減らすことができます。つばの広い帽子は、顔に当たる紫外線量もおよそ半減させる効果があり、晴れた日には必須の花粉症と紫外線対策アイテムということになります。
生活習慣で予防!
(1)洗顔とうがい
帰宅後は顔(特に眼や鼻の周囲)に付着した花粉を洗い落とすために洗顔をした方が良いでしょう。出来れば、洗顔だけでなく、帰宅後は出来るだけ早く、入浴をして顔だけでなく、体や髪に付着した花粉を洗い流すことをおススメします。
うがいには、喉に流れた花粉を除去する一定の効果があるため、帰宅したらうがいも花粉症予防の上で欠かせない生活習慣といえます。
(2)換気と掃除
春らしい陽気になると、窓を大きく開けて換気をしたくなりますが、花粉症の方は窓の開け方も少し気にしてみると良さそうです。3LDKのマンション1戸で1時間窓を全開にした場合に約1000万個もの花粉が室内に入ったという実験データもあります。同じ条件で窓を開ける幅を10センチ程度に抑え、レースのカーテンをすることで室内へ入る花粉量を約4分の1に減らすことが出来るというデータがあります。
窓を開ける幅を小さくしても、どうしても玄関や通気口、衣服などについた花粉などが室内に侵入しますので、花粉飛散時期はこまめな掃除を心がけると良いでしょう。
(3)食べ物や飲み物
現在、花粉症に効くといわれて発売されている食べ物や飲み物については、十分なデータが得られていない場合が多く、やはりバランスの良い食生活やしっかり睡眠をとることなどが重要です。
今年のシラカバ花粉飛散の傾向
(1)飛散開始時期は?
札幌などは例年通り、大型連休前の4月下旬から飛散しそうです。北海道立衛生研究所が発表した飛散開始予想によると、札幌が4/26、函館は4/27、旭川と岩見沢が5/2、帯広が5/6、北見は5/9に今年のシラカバ花粉飛散がスタートするということです。
ただ、気温がこの先暖かい日が多くなった場合は、この飛散開始予想よりも、早めに飛び始めますし、ごく微量は飛散開始予想日よりも前に飛び始めている場合もあるため注意は必要です。
(2)飛散量は?
前年の6月などの夏季の気温や日照時間などによって花粉の雄花の量が影響します。これらのデータを元に北海道立衛生研究所が計算した今年の総飛散量は『例年よりも少なめ』ということです。
ただ、少なめといっても安心はできません。花粉症の症状は量が多い、少ないに限らず、1個でも体内に入ると症状が現れます。また、毎年観察をしている札幌市内のいくつかのシラカバの木をみると、花粉を放出させる雄花の量は例年並みか、木によってはここ数年の中でも雄花の量が多いものも存在します。飛散開始から飛散終了までの飛散期間は、飛散開始からの気温などに左右されますが、5月の気温が平年より高めだと、飛散が終わる時期も多少早くなる傾向があります。
シラカバなど花粉と上手に付き合っていくには、今回お伝えした対策をすることが大切ですが、これまで大丈夫な人でも、ある日突然、花粉症になることもあります。まずは日々の天気予報をこまめにチェックして、花粉を吸いこむ量は出来るだけ少なくすることが得策です!
※5月号の主な参考文献:『花粉症保健指導マニュアル(環境省)』、『北海道におけるシラカバ花粉予報(林業試験場)』、『北海道立衛生研究所WEBページ』
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