死者が50人以上と一番被害が大きくなった熊本の7/4の豪雨は、予測は難しかったのは確かだが、果たして予測は不可能だったのでしょうか?

 

気象庁予報の倍以上の雨が降った

豪雨前日の7/3夕方4時半頃に気象庁が発表した熊本県球磨地方の予想降水量は翌日夕方までの24時間で多い所で200㎜でした。

ところが、気象庁の数値予報モデルの数値を見ると、球磨川上流部などでは最大400ミリ前後の記録的な大雨になるという予測を7/3の昼過ぎの段階で計算しているデータもあったのです。

実際に降った雨の量は、球磨川流域の広い範囲で24時間で400㎜を越える雨量となりました。しかも、その大半が7/4の未明から早朝までに集中的に降りましたが、線状降水帯が形成される可能性を示唆する予測資料も前日の午後の段階ではありました。

2020/7/4 午前4時の雨雲の様子 気象庁WEBより

タイムラインなど防災行動計画も機能できず

事前に関係各所が連携し、どのような防災行動を行うかを時系列で設計した「球磨川タイムライン」も完成し、運用体制も整えていましたが、これがうまく機能することもできませんでした。

事前に防災対策を進められなかった理由は、気象庁から発表された「200㎜」という数値をもとに想定が進められたことや、金曜日の夜遅くから土曜日の朝にかけての豪雨というタイミングも良くなかった可能性が高いとみています。

前日の予測の段階で、「多くなる場合は400ミリ前後」という数値や情報をなぜ気象庁は発表することが出来なかったのか?

今後は気象庁が発表した予測情報に対して、外部機関が検証する必要があるのではないかと考えられます。

 

警報を発表できるのは気象庁のみ

20年以上前に民間へも気象予報事業が許可され、認可を受けた気象会社独自の予報は発表できるようになりましたが、気象業務法により『警報・注意報』などの防災情報を発表できるのは、気象庁のみということが法律で定められているのです。

これは、災害が発生する恐れがある時に、民間の気象予報事業者や気象庁などから様々な見解の異なる予報が出てしまうと、命を守るための判断や行動をどのようにすべきか混乱が生じる危険性があるためです。ただ、気象庁しか発表することが許されていない警報などの防災気象情報の精度が低いことは、国民の人命や財産に大きなダメージを与える危険性があるのです。

では、なぜ今回の熊本豪雨については、コンピューターの計算で400ミリ前後という予測もあった中で、どのような判断で球磨地方を最大200ミリという予想で発表したのか?気象庁は一連の災害が落ち着いた後にきちんと検証し、説明する責任があるのではないでしょうか?

これは気象庁に対しての批判ではなく、国民の命を重大な災害から守るための情報を発信する責任機関として、防災気象情報の発表精度向上にもっと努めてもらいたいという要望です。

中国では梅雨前線の影響で6月末をピークに記録的な大雨災害が起きていました。中国から東シナ海を渡ると九州がありますが、中国で記録的な豪雨をもたらしたポテンシャルのある空気がある前提で、九州の西の東シナ海上にある7/3の雲の様子を見ると、コンピューターで計算された球磨川流域で最大400ミリ前後という数字を採用した情報を発表できたはずと考えられます。民間の気象事業者で予報を長年経験している予報士ならこのような判断で、より良い情報を伝えられた可能性はあります。

 

自分の身は自分で守る意識で情報収集を

15時間先までのきめ細かい雨の予測は気象庁WEBサイト今後の雨で見ることができます。また、自分の住む場所が大雨によりどのような危険が迫っているかも気象庁の危険度分布で確認できます。

たとえ、前日の段階で予測にずれがあったとしても、数時間前の予測は非常に精度高く予測出来ていて、その情報はどなたでも確認することができるのです。

自分や家族の身を守るには、他人任せではなく、自ら情報を入手するという意識が必要です。